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元・野良ちゃんで肢を無くしたリオンとFIPでも元気に頑張ってる局長の日々。


by lyon-sion
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防衛

リオンにごはんを持っていくのも5日が過ぎた。

会社から帰って、リオンのもとに行けるのはやっぱり夜8時~10時頃。

車の通る道から脇にそれたこの道は、先がすぼまるように伸びていて
車の通り抜けができない。

だから、この道を通るのは、ほとんどこのあたりの住人に限られる。


そんな場所で、毎夜フェンス越しに手を伸ばし
ランチパックの容器を差し入れる私の姿を、訝しげに見る人も多かった。

ランチパックはクリーム色の容器本体に、透明のフタがついているもので
最初はクリーム色の容器に、フードを入れてあげていた。

4日目の夜に、リオンが少し食べ残しをしたので、
いつもなら容器を回収して帰るところをその日は置いて帰る事にした。
でも、夜目にでも浮かび上がるクリーム色の容器は
誰が見ても野良猫にエサをあげているのがはっきりわかった。

事故か虐待かはわからないけれど
いずれにしろ、人間に傷つけられたのは確かなようだから
クリーム色の容器を置いておくなどとは
倉庫下にネコがいることを知らしめるようなものだった。

なるべく食べ終わるまでは、そばにいて見守り
容器は必ず持ち帰るようにすることにした。

だけど、ネコは食べものの確保ができたとなると
安心して休憩したり、後でゆっくり食べようと取って置いたりもするようだから
何がなんでも持ち帰るわけにも行かないということも起こりえる。

要は暗がりで目立たなければいい。

クリーム色の容器は、料理するときにでも使うとして
リオンのフードと水は、透明のフタ(深さ1.5cm程度)にそれぞれいれておくことにした。

夜でも目立たないし、翌晩回収するまで
通りかかった人にも気付かれにくいはず。



ランチパックは容器と透明のフタ3個セットで売っていたので
1回ごはんをあげる度に、フタだけ2個使う。

いつかスーパーの人に見つかったとき、少しばかりでも心証が良くなるように
ランチパックとフードは、そのスーパーで買ったものしかあげなかった。
バカな考えかもしれないが、
野良猫にこそこそやってても、それでも私はフードとランチパックを買う「客」という
最後の砦みたいなものがほしかった。

だから、ホームセンターで50個入りくらいのを買っておこうかとも考えたけれど
結局、2日に1回、割高でもスーパーでランチパックを買っていた。

それでも。
やっぱり毎日通えば、通りすがる人の中で
何回か顔を合わせてしまう人も出てきてしまった。

リオンにごはんをあげ、そばにいるときはまだいい。
でも、あまり食べてるのをじっと見ているのも、リオンにはストレスになるかと思って
5mくらい離れた所で待っているほうが、一見怪しまれてしまう。


覚悟を決め、スーパーの店長に打ち明け
近日中に保護するから、今はごはんをスーパーの敷地内にいるネコに
あげることの許可を求めてみようと思った。

交渉ごとというのは緊張するものだが
失敗はできない。
だって、リオンは、今すぐ私に抱き上げさせてくれないから。
これが出来れば、こんな交渉はしなくてもいいのだが
警戒心が強い今は、それは無理と言うものだった。

ランチパックを買う心境と同じく
「客である」というStanceだけは守りたい小心者の私だったが
それでも精一杯にこやかに謙虚に、
そして今購入した晩御飯の食材の入ったスーパーのビニール袋を
両手でしっかり持ちながら、従業員の男性に声をかけた。

「店長さん、いらっしゃいませんか?」

あいにく、店長は帰宅後だったので
マネージャーという肩書きの方が対応してくれることになった。

マネージャーは抜かりなく、私の手に持っているスーパーのマークの入った
ビニール袋に目を遣り、低姿勢で対応をしてくれる。

私もこれ以上は、このスーパーとなんの関わりがあるわけでなし
買い物客であるという立場というものを、この交渉事が始まった時点で
使い果たしてしまったので、後は誠意で押し通すしかなくなっていた。

そして、
野良であろう白いネコがスーパーの敷地内の倉庫下にいること
その子は肢を無くしていて行動範囲が狭いこと
近日中に引き取りたいが、野良であるゆえ警戒心が強いから今すぐ連れ帰れない
などと言うことを説明した。
そして、警戒心が薄まったら、すぐにでも捕まえて病院へ連れて行くことを伝え
それまでは、エサ皿は毎日食べさせ終わったら撤去するから
あげ続けさせてほしいとお願いしてみた。

これは「お願い」であると同時に
白いネコは私のネコであるということを伝え
今は野良だからといって追い払い危害を加えないでくれという「告知」のつもりでもあった。

厚かましい話しであることは分っていたが
日中、ここに来ることが出来ない身では
リオンをニンゲンから守ってやることができない・・・・・


話を聞き終わったマネージャーの顔は
特に変わらなかった。
でも。

あげるだけならかまいませんよ。

という返事をもらうことが出来た。

もちろん、「敷地内に入らない」でエサをあげるという言葉が隠されてるのは
いやでも伝わってきたけれど。

でもとりあえず、許可のようなものはもらえた。
これで、毎夜、私がフェンスの中を覗きながらこそこそやって
誰かに咎められたとしても、説明をすることが出来る。

とりあえず、とりあえずでしかないけれど
これで、少しの間の安心を得ることが出来たし
リオンをこの敷地内でだけは守ってやることも出来る。

つかの間の安心でも、心は晴れ
数日振りに、冷たい風の中、自転車を漕いで帰る道で
「心配」の二文字を忘れることが出来た。
by lyon-sion | 2006-11-25 01:08 | リオンとの出会い~お迎え迄